韓国・朝鮮人「戦犯」の国家補償請求に対する国の「見解」と靖国合祀の偽善
「法廷で裁かれる 日本の戦争責任」(瑞慶山茂弁護士・責任編集、宇都宮軍縮研究室・編集協力)。
「従軍慰安婦」「強制連行」などを裁判資料から立証している労作だ。
中でも印象に残ったのが、韓国・朝鮮人「BC級戦犯」の国家補償請求に対する
国の「見解」と靖国合祀の偽善である。
あなたは、A級戦犯で絞首刑になった東條英機元首相の遺族に、
国が「公務死」として遺族年金を支給したことを知っていますか。
しかし、朝鮮半島出身の林永俊氏の戦犯絞首刑には「公務死」ではなく、
「日本国民が等しく負わなければならない戦争損害だ」といい、
同じく李義度氏の戦犯4年間拘禁は「特別公務負担」でなく、
「日本国民が等しく負わなければならない戦争損害だ」とした。
林氏も李氏も、当時日本の植民地だった朝鮮半島に生まれ、勝手に“日本人”にされたのに。
彼らは日本軍軍属として徴用され、捕虜監視の任務を負わされ、
戦後、B、C級戦犯として、軍事法廷で絞首刑になったり拘禁されたりした。
しかし、彼らに対し、日本政府はなんの補償もしていない
その「根拠」としているのが、以下の2点。
日本は、1952年4月に通達を出し、
韓国・朝鮮人の日本国籍を一方的に喪失させる措置を取った。
日本は、1961年、
日本国籍を喪失させた韓国・朝鮮人の日本国に対する個人請求権消滅させる法律(措置法)を制定した。
1995年5月、韓国在住の8人が原告となって、
日本政府に公式陳謝と国家補償請求を東京地裁に提訴した。
最高裁まで争ったが2001年に上告棄却となった。
彼らは朝鮮戦争とその後の軍事政権下で戦後50年を経てでしか提訴できなかったのだ。
類似する多くの裁判は90年代に入ってから提訴されている
東條元首相は、絞首刑を公務死として靖国神社に合祀されている。
また、林永俊氏らも公務死として靖国神社に合祀されている。
林永俊氏らに、旧日本軍は「日本軍人として、清く絞首刑に服せよ」と命じ、
その後、政府の日本国籍を剥奪によって日本国籍を喪失したから「公務死」ではないとして、
個人請求権を認めていない。
日本人のA級戦犯には、「公務死」あるいは「特別公務負担」で補償しているのに。
偽善の極みである。
今の時代に読んで欲しい、今年3月に出版された労作。
伊丹市M